
「国試に落ちました…」泣き出す内定者に、採用担当者がかけるべき「魔法の言葉」と「契約同意の鉄則」
この記事を読んでほしい方
社会福祉法人・医療法人などで新卒採用を担当されており、国試不合格時の対応マニュアルを作成したい方
内定者の離脱を防ぎ、長期的な信頼関係を築きたい施設長・事務局の方
3月末の緊急事態に、危機管理とメンタルフォローを両立させたい方
所要時間:約6分
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日々の採用活動、そして施設運営、本当にお疲れ様です。
ご利用者様の安全を守りながら、未来の仲間を探す大変な業務、本当にありがとうございます。
さて、3月末。採用担当者の皆様が最も緊張する電話があります。それは、「国試に落ちました…」という絶望的な連絡です。
本人も絶望していますが、これは採用担当者にとっても「人員配置計画が狂う」緊急事態です。しかし、ここで給与変更などの事務的な手続きを優先してしまうと、内定者のエンゲージメント(愛社精神)は一瞬でゼロになります。
今回の対応は、内定者の心を救うと共に、「この法人で頑張りたい」という揺るぎない愛社精神を決定づける最大のチャンスです。危機管理とメンタルフォローを両立させるための戦略を解説します。
1. 【最優先】まず伝えるべきは「内定取り消しはない」という心理的安全性
絶望している内定者が一番恐れているのは、「内定が取り消されること」と「無資格者として冷遇されること」です。
このため、採用担当者は法的な手続き(給与変更など)よりも先に、以下の「心理的な安全の約束」を即時伝える必要があります。
▼ 最初に伝えるべき「魔法の約束」
「内定取り消しは一切ない」:
即座に伝達し、法人が資格の有無にかかわらず、その学生の人間性を評価し続けていることを保証します。「働きながら来年絶対合格させよう」:
法人が再チャレンジを全面的に応援し、一緒に目標に向かうパートナーであることを約束する「魔法の言葉」です。「あなたの頑張りを知っている」:
「〇〇さんが頑張っていた姿は、面接や学校からの評判でよく知っています。その努力は、絶対に無駄になりません。」と、努力を肯定します。
この最初の対応こそが、内定者が「この法人は、資格の有無に関わらず、私の人間性を見てくれている」と感じる最大の瞬間です。
※(注釈)法的なリスクに関するご注意
「雇用契約書に『資格取得を入社の条件とする』と書いてあるから、内定を取り消してもいいのでは?」と考える担当者様もいらっしゃるかもしれません。しかし、介護業界においてそれは極めてリスクの高い判断です。
医師や薬剤師とは異なり、介護職は資格がなくても「介護助手」や「生活支援員」として業務自体は可能です。日本の労働法では、「資格がなくても働ける場所がある」のに内定を取り消すことは、「解雇権の濫用」として無効(違法)と判断される可能性が高いです。
したがって、不合格時は「内定取り消し(解雇)」ではなく、「資格手当を外した給与への変更」や「雇用形態の変更」で対応するのが、法的にも安全であり、何より学生に対して誠実な対応となります。
2. 【メンタルケア】絶望した心を救う「共感と努力の肯定」
内定者が電話口で涙声になった時、採用担当者の対応が、学生の「人生の挫折」に対する捉え方を左右します。
▼ 心を救う「共感の鉄則」
鉄則1:事実の受容:
「そうだったんですね。一番辛い時に、すぐに連絡してくれて本当にありがとう。」と、まずは感情を共有します。鉄則2:努力の肯定:
「〇〇さんが頑張っていた姿は、面接や学校からの評判でよく知っています。その努力は、絶対に無駄になりません。」鉄則3:安心の約束:
「まずは、今日のところは何も考えなくていいから。その学生の入社を心から楽しみにしていることに、変わりはありません。」
まずは感情を共有し、「あなたの存在価値は、資格で決まらない」というメッセージを、心から伝えることが重要です。
3. 【実務対応】トラブルを避ける「契約変更の同意書」の取り交わし方
感情の受容が完了したら、次は速やかに事務的な対応に移ります。この手続きを曖昧にすると、後で労働条件を巡るトラブルになりかねません。
▼ トラブルを防ぐ実務対応のステップ
実務対応の切り分け: メンタルケアが済んだ翌日以降に、「落ち着いた頃に、給与や再チャレンジのスケジュールを相談させてね」と、内定者に選択権を持たせて連絡します。
雇用形態・給与の提示: 無資格者としての給与額、雇用形態(契約社員など)の変更点を明確に提示します。
「契約変更の同意書」の取り交わし:
給与や雇用形態が変更になることを、必ず書面(同意書)で内定者と取り交わします。 口頭での説明だけで済ませず、「本人が納得して同意した」という証拠を残すことが、法的なトラブル回避につながります。
この契約変更のプロセスこそ、法人が透明性を重んじる誠実な組織であることを示す最後の機会です。
4. 【逆転の発想】失敗を「成長の糧」と定義し、戦力にする
不合格という失敗は、決してマイナスではありません。「落ちた悔しさ」を知っている職員こそ、将来、同じ境遇の後輩に優しくできる良いリーダーになります。
採用担当者は、この失敗を組織内で「成長の糧」として定義し直す必要があります。
人事からの情報共有:
現場リーダーに対し、「〇〇さんは国試に不合格だったが、その人柄とポテンシャルは法人が太鼓判を押している。その学生は将来の幹部候補であり、再チャレンジを全力で応援する」と、ネガティブな情報ではなく「期待値」を伝達します。現場指導者への役割付与:
「その学生の配属先では、再チャレンジに必要な知識や、試験勉強の時間をどう確保するか、指導担当者(メンター)としてその学生を支えてほしい」と、指導者に明確な役割と裁量を与えます。
この対応を通じて、内定者は「この法人は私の失敗を、私の将来の強みとして見てくれている」と感じ、早期離職の可能性が極限まで下がります。
5. 【外部連携】今回の対応を「最強の愛社精神」に変える
採用は内定を出して終わりではありません。こうした個別の事情に寄り添い、内定者の心に火を灯し続けるフォロー体制こそが重要です。
まとめ:今回の危機を「最高の信頼」に変える
国試不合格の電話は、採用担当者にとって試練です。しかし、そこには「この法人は、私を資格の有無に関係なく大切にしてくれるか」という、内定者からの最大の問いかけが込められています。
最優先はメンタルケア。「魔法の言葉」で心を救う。
事務手続きは同意書で透明化し、法的リスクを防ぐ。
失敗を「成長の糧」と定義し、現場を巻き込み再チャレンジを支援する。
こうしたフォロー体制こそが、内定者の愛社精神を決定づけ、貴法人の定着力を上げる最大の秘訣です。
「国試不合格時の対応マニュアルや同意書のひな型を整備したい」
「内定者の入社意欲を高めるためのフォロー研修を導入したい」
「採用リスクを回避するためのコンサルティングを受けたい」
そのようにお考えの採用担当者様、施設長様は、ぜひ一度私たちにご相談ください。
危機をチャンスに変え、貴法人の採用力・定着力を強化するサポートをさせていただきます。








