
【採用担当者必見】就活生の「生成AI活用(ES・自己PR等)」を見極めるための3つの新評価軸
近年急増する就活生の生成AI活用。「ESのレベルは高いが面接で深まらない」とお悩みの採用担当者向けに、AIネイティブ世代の真の資質を見抜くための選考対策と、新たな3つの評価軸を徹底解説します。
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はじめに:今年の就活生、みんな「優等生」に見えませんか?
「今年のエントリーシート(ES)、やけに文章レベルが高くないか?」
「面接でみんな同じような『整った回答』をしてくる……」
採用現場の最前線に立つ皆様、このような違和感を抱いてはいないでしょうか。
結論から申し上げます。その直感は、100%正しいものです。
2023年以降、ChatGPTやGeminiといった生成AIが爆発的に普及しました。今の就活生にとって、AIはもはや「カンニングペーパー」ではなく、当たり前の「就活ツール」です。自己分析の壁打ち、ESの添削、完璧な想定問答集の作成――彼らはAIという強力な武器で武装しています。
これまでの採用基準であった「論理的思考力」や「文章構成力」だけで評価しようとすれば、AIをうまく使った学生が上位を独占し、本来のポテンシャルを持った原石を見落とすリスクがあります。
本コラムでは、AIネイティブ世代の採用において企業側が取るべき「選考プロセスの再設計」について、明日から使える具体的な対策をご紹介します。
1. なぜ従来の手法が通じないのか?「持ち帰りテキスト」の無力化
これまでの初期選考、特にES選考では、「時間をかけて推敲されたテキスト」を評価してきました。しかし、生成AIの登場により、この前提は崩壊しています。
AIを使えば、「私の強みは粘り強さです」というたった一文から、STAR法(Situation, Task, Action, Result)に基づいた完璧なエピソードを数秒で生成可能です。
その結果、何が起きるか。「平均点以上の優等生」の大量生産です。
以下の表をご覧ください。これまでの評価軸がいかに機能しなくなっているかが分かります。
このように、私たちがこれまで「優秀さ」の指標としてきたものは、今や「ツールの性能」になり替わってしまいました。
スクリーニング機能が麻痺し、本来会うべきではない層までが面接に進んでしまう。そして面接官は、学生が暗記してきた「AI製・想定問答」の皮を剥がすことに時間を奪われ、本質的な対話に至らないまま時間切れになる――。
これが今、多くの企業で起きている「採用現場の静かなる崩壊」です。
2. AI時代に導入すべき「3つの新評価軸」
では、私たちはどうすればよいのでしょうか。
「AIの使用を禁止する」ことは不可能ですし、実務でAIを活用する現代においてナンセンスです。
重要なのは、「AIには模倣できない領域」に評価の重心を移すことです。当社では、以下の3つの軸への転換を推奨しています。
① 【真正性】綺麗な「成果」より、泥臭い「感情とプロセス」
AIが生成するエピソードは論理的で美しいですが、どうしても欠けてしまうものがあります。それは「負の感情」と「細部のリアリティ」です。
AIは一般的な「正論」や「ポジティブな解決策」は得意ですが、人間特有の葛藤、嫉妬、迷いといったドロドロした感情を描写するのは苦手です。あえてここを深掘りすることで、そのエピソードが実体験かどうかの「解像度」が見えてきます。
・Before(成果重視):
「学生時代に頑張ったことは何ですか?その成果は?」
・After(プロセス・感情重視):
「その活動の中で、一番腹が立ったことや、逃げ出したいと思った瞬間はいつですか?」
「その時、具体的にどう感情を処理しましたか?」
「あの時AではなくBを選んだ、心情や理由は何ですか?」
② 【瞬発力】過去の「ガクチカ」より、未来の「シチュエーショナル」
「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」や「自己PR」は、事前にAIで完璧な台本を作れます。
対策として有効なのが、その場での思考力を問う「シチュエーショナル・インタビュー(状況面接)」です。
質問例:
「今、君が当社の新人で、お客様から理不尽なクレームを受けたとします。上司は不在です。最初の第一声、君なら何と言いますか?」
この問いに正解はありません。そして、事前学習データ(AI)に頼ることもできません。
その場で状況を定義し、自分の価値観で判断して言葉を発する。この「思考の瞬発力」こそ、AI時代に求められる真の素養です。
③ 【身体性】テキスト情報より、非言語情報
初期選考において、テキスト(ES)への依存度を下げ、「非言語情報」を取り入れる企業が増えています。
録画面接(動画面接):
30秒〜1分の自己PR動画を提出させる。AIが書いたスクリプトを棒読みしていないか、自分の言葉で熱を持って語っているかを確認できます。リアルタイム・ライティング:
説明会や適性検査の会場で、その場で短文を書かせる。自宅で作成したESと、その場で書いた文章に著しい乖離がないかを確認します。
3. 「でも、現場の負担が増えるのでは?」という懸念に対して
ここまで読んで、多くの採用担当者様はこう思われたかもしれません。
「言っていることは分かるが、一人ひとりをそこまで深掘りする時間もスキルもない」と。
その不安はもっともです。しかし、視点を変えてみてください。
AIで武装した学生を従来の方法で通してしまい、入社後に「こんなはずじゃなかった」とミスマッチが発覚するコスト。
あるいは、AIを使っているだけで実は優秀なポテンシャルを持つ学生を、「なんか怪しい」という理由だけで落としてしまう機会損失。
これらと比較すれば、選考プロセスを少し変えるコストの方が圧倒的に低いのです。
全ての質問を変える必要はありません。面接の中にたった一つ、「答えのない問い(シチュエーショナル)」を混ぜるだけでも、学生の目の色は変わります。その瞬間の反応こそが、真実です。
4. 逆転の発想:「AIリテラシー」を評価項目にする
最後に、競合他社があまり語らない視点をお伝えします。
それは「AIを使いこなす能力(AIリテラシー)」を評価してしまうという考え方です。
これからのビジネスパーソンにとって、AIを活用できることは必須スキルです。「AIを使わせない」のではなく、「AIという道具をどう使うか」も立派な選考基準となり得ます。
インターンシップやグループワークでは、あえて「生成AIの使用OK」と明言してみてください。そうすると、学生は二極化します。
A層: AIが出した回答をそのまま発表する学生(思考停止)
B層: AIに的確な指示(プロンプト)を出し、出てきた回答を批判的に修正して、より良い解を導く学生(司令塔)
私たちが欲しいのは、間違いなくB層の学生です。
AIを隠させるのではなく、AIを使わせることで、かえってその学生の「地頭」や「批判的思考力」が浮き彫りになるのです。
まとめ:AIという「鎧」を脱がせ、学生の「素」に向き合う
生成AIの登場は、採用活動における「化けの皮」をより精巧にしました。しかし、恐れる必要はありません。
どれだけツールが進化しても、最終的に仕事をするのは「生身の人間」だからです。
準備できない問い(瞬発力)
人間臭い感情の深掘り(真正性)
非言語のコミュニケーション(身体性)
この3点を選考プロセスに組み込むことで、AIという鎧を脱がせ、学生本来の魅力やポテンシャルを見抜くことができます。
AI対策は、決して「学生を疑うこと」ではありません。
「便利なツールに頼らずとも、自分の足で立てる人間かどうか」を確認する、愛あるプロセスなのです。
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