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新卒面接で「完璧な回答」は疑え。AIで武装した学生の『台本』を崩し、本音を引き出す「3つのシフト」

この記事を読んでほしい方

  • 新卒採用を担当する面接官・人事責任者の方

  • 学生の回答がどこか「ロボット」のようで、人間味を感じられず不安な方

  • 生成AI時代に対応した、本音を引き出す具体的な質問手法を知りたい方

所要時間:約6分

「質問に対して、淀みなく完璧な回答が返ってくる。でも、なぜか心が動かない」

最近の新卒面接で、そんな「違和感」を感じることはありませんか?

その直感は、おそらく正しいものです。なぜなら、目の前の学生は「自分の言葉」で話しているのではなく、生成AIが作成した「最適解」を暗記し、演じている可能性が高いからです。

ES(エントリーシート)同様、面接対策にChatGPTなどの生成AIを使うのはもはや常識です。彼らは想定される質問への回答を完璧に準備しています。しかし、私たちが採用したいのは「演技のうまい学生」ではありません。

AI時代の面接官に求められるのは、用意された台本を読み上げる「発表会」を終わらせ、台本のない「対話(ライブ)」へと持ち込むファシリテーション能力です。

今回は、AI武装した学生の「仮面」を外し、その場の「アドリブ」から人間性を見抜くための面接術について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.1. 「私の就職活動の軸は…」で始まる違和感の正体
  2. 2.2. 脱・AI台本!面接官が起こすべき「3つのシフト」
    1. 2.1.①【フォーカス(焦点)のシフト】
    2. 2.2.②【タイムライン(時間軸)のシフト】
    3. 2.3.③【スタンス(姿勢)のシフト】
  3. 3.3. 【保存版】学生の言葉を引き出す「優しい深掘り質問」リスト
    1. 3.1.A. 「想定外」を作り出し、アドリブ力を見る質問
    2. 3.2.B. 「負の感情」に寄り添い、ストレス耐性を見る質問
    3. 3.3.C. 「AIとの差分」を問い、価値観を見る質問
  4. 4.4. 現場任せにしない。組織として「面接力」を上げる
  5. 5.まとめ:面接官自身が「アドリブ」を楽しむ

1. 「私の就職活動の軸は…」で始まる違和感の正体

最近の面接で、判で押したように「私の就職活動の軸は3点あります。1点目は…」と切り出す学生が急増していると感じませんか?

「論理的で素晴らしい」と感じる一方で、「またその話し方か…」と食傷気味になっている面接官も多いはずです。

実は、この「冒頭から『軸(抽象的な定義)』を完璧に言語化して語り出すスタイル」こそ、AIが作成した台本(スクリプト)の典型的な特徴です。

  • 人間の話し方(帰納的):
    「〇〇な体験をして感動しました」「実はすごく悔しい思いをして…」という、具体的な「感情・原体験」から話が始まることが多い。

  • AIの話し方(演繹的):
    論理構成を優先するため、「まず結論(軸)を定義し、その証明としてエピソードを後付けする」という構成を生成する。

その結果、言葉は流暢なのに、どこか「借り物の言葉」のように聞こえてしまうのです。

面接官が感じる「心が動かない」「ロボットみたいだ」という違和感の原因は、このAI特有の「過剰な構造化」にあります。


2. 脱・AI台本!面接官が起こすべき「3つのシフト」

AIが「整った台本」を用意してくる今、面接官がこれまでのやり方を続けていては、学生の本当の姿は見えてきません。

AIの裏をかき、人間性を見抜くために、面接のスタイルを以下の3つの軸で「シフト(転換)」させてください。

①【フォーカス(焦点)のシフト】

「綺麗なリザルト(結果)」から「泥臭いプロセス(葛藤)」へ

AIが生成する文章は、無駄がなく最短距離で成功へ向かう「綺麗なストーリー」です。しかし、私たちが知りたいのは、AIがノイズとして除去してしまう「人間臭い迷い」の部分です。

質問のフォーカスを「何をしたか(What)」から、「そこでどう迷ったか(How & Why)」へずらしてください。

②【タイムライン(時間軸)のシフト】

「面接の瞬間(点)」から「準備の背景(線)」へ

「今の回答」だけで判断するのをやめましょう。視野を広げ、その回答が出てくるまでの「背景」に想像力を働かせます。

「準備の段階で、一番迷った箇所はどこ?」など、完成までの「試行錯誤」を聞くことで、その人の思考の癖が見えます。

③【スタンス(姿勢)のシフト】

「正解の判定者(Judge)」から「共犯関係の演出家(Director)」へ

これが最も重要です。「学生がボロを出さないか監視する」というスタンスを捨て、学生と一緒に「本音」を探しに行く、演出家のようなスタンスです。「ぶっちゃけトーク」ができる空気をあえて作ることで、学生はAIの台本を捨てざるを得なくなります。


3. 【保存版】学生の言葉を引き出す「優しい深掘り質問」リスト

ビジネス用語で詰めると学生は委縮し、余計に「台本」に頼ろうとします。

学生の目線に立ち、課外活動やアルバイトの経験を自然に話せるような「優しいけれど、本質を突く」質問例をご紹介します。

A. 「想定外」を作り出し、アドリブ力を見る質問

AI対策済み(台本あり)の学生が最も嫌がるのは、前提条件を崩されることです。

・「今の話、すごくうまくいったんだね! 逆にもし、今の知識を持ったまま『もう一回最初からやり直せる』としたら、どこを変えてみたい?」

   狙い: 成功体験の自慢ではなく、今の視点での改善点(メタ認知)を優しく問います。

・「さっき挙げてくれた『コミュニケーション能力』という言葉をあえて使わずに、〇〇さんらしさを伝えるとしたら、どんな表現になるかな?」

   狙い: 使い古されたキーワードを封じ、自分の言葉での言い換え(語彙力)を見ます。

・「ここまでの面接で、言えてよかったことはある? 逆に、『あれも言っておけばよかったなぁ』って後悔してることはない?」

   狙い: 面接そのものを振り返らせることで、瞬発的な客観視能力を測ります。

B. 「負の感情」に寄り添い、ストレス耐性を見る質問

AIは「ネガティブな感情」や「人間関係の悩み」の描写が苦手です。ここを共感的に深掘りします。

・「活動の中で、『正直、これはしんどいな』とか『理不尽だな』って感じた瞬間はなかった? その時、どうやって気持ちを切り替えたの?」

   狙い: 綺麗な解決策ではなく、ネガティブな感情の処理の仕方を見ます。

・「みんなで何かやるとき、自分と意見が合わない人もいたと思うんだけど、その人は何を大事にしている人だった?」

   狙い: 「敵」ではなく「相手の価値観」を理解しようとしたか(他者理解)を確認します。

・「その決断をする時、選ばなかったほうの選択肢にも良いところはあったと思うんだけど、最後の最後まで迷ったりしなかった?」

   狙い: 決断の裏にある迷いと、何かを捨てる時の価値判断基準を測ります。

C. 「AIとの差分」を問い、価値観を見る質問

AI利用を前提とし、そこにある「人間らしさ」を問います。

・「AIを使ってESを書いたり練習したりした時、AIのアドバイスに対して『あ、これは私っぽくないな』って思って直したところってある?」

   狙い: 自分のアイデンティティ(譲れないもの)を把握しているかを見ます。

・「効率とか正解とか関係なく、〇〇さんが『これだけはどうしても譲れない』ってこだわっていること、何かある?」

   狙い: 合理性以外の判断軸(その人らしさ)を持っているかを確認します。

・「今日用意してきてくれたお話の中で、『ここはちょっと自信ないな』とか『ここは頑張って良く見せようとしたな』ってところ、実はあったりする?(笑)」

   狙い: 誠実さと、弱みを見せる勇気(自己開示)を、冗談めかして引き出します。

4. 現場任せにしない。組織として「面接力」を上げる

これらの質問は強力ですが、一朝一夕で使いこなせるものではありません。

「これからの面接はこうしてください」と現場の面接官にマニュアルを渡すだけでは、対応しきれないでしょう。

  • 現場の面接官へのトレーニング:
    「なぜこの質問が必要なのか」を理解してもらい、ロープレを通じて質問力を磨く場が必要です。

  • 評価シートの改訂:
    「論理的か」「ハキハキしているか」といった従来の項目に加え、「葛藤プロセスを語れるか」「自分の言葉で話しているか」といった評価軸を導入する必要があります。

もし、社内のリソースだけでこれらを進めるのが難しい場合は、「社外のプロフェッショナル」を頼るのも一つの戦略です。

面接官トレーニングや、AI時代に対応した評価基準の設計など、専門家の知見を入れることで、採用活動の質をスピーディーに変革できます。

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まとめ:面接官自身が「アドリブ」を楽しむ

AIが台頭すればするほど、面接という「生身の人間同士が対峙する場」の価値は高まります。

綺麗なロジックや成功体験の確認は、書類(やAI)に任せておけばいいのです。

面接という貴重な時間を使って確認すべきは、「不測の事態や正解のない問いに対して、この人はどう悩み、どう向き合うのか」という、人間としての姿勢(スタンス)です。

学生の「台本」を剥がし、素顔の彼らと出会うこと。

それこそが、AIには代替できない、これからの採用担当者の腕の見せ所ではないでしょうか。

「面接官によって評価のバラつきが大きい」

「現場の社員が、AI世代の学生の対応に困っている」

「本音を引き出すための具体的な質問集を作りたい」

そのような課題をお持ちであれば、ぜひ採用総研のコンサルティングチームにご相談ください。

貴社の採用基準に合わせた面接設計から、現場面接官へのトレーニングまで、採用成功に向けて伴走いたします。

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【採用総研のコンサルティングサービス】

宮本一平
宮本一平
2014年入社。営業マネージャー。企業の採用・教育に対して戦略的・包括的サポートを行う。採用においては、トレンドに合わせて採用難度の高い「機電系」特化の大量採用の採用フロー設計やコンテンツ設計を担当し、また設立間もない「ベンチャー企業」の採用戦略設計や実務運用フォローアップなども行う。教育においては、セールスだけでなく講師も兼任し、企業ニーズに合わせたプログラム設計から、階層別研修の全体設計までトータルプロデュース。戦略的人事コンサルタントとして、採用・教育ノウハウをクライアントに還元すべく、セールスフィールドにいることをモットーとしている。プライベートでは、看護師の妻を持ち、2人の男の子の父親で、自らが外遊び大好き「全力少年」。

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