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「ES選考」はもう時代遅れ?AI時代に「会うべき人材」を逃さない選考設計論

生成AIの普及でエントリーシート(ES)によるスクリーニングは形骸化してきました。ESに代わる有効な見極め手法とは?適性検査の早期導入や動画面接など、AI時代に「会うべき人材」を確実にグリップする選考改革を解説。

目次[非表示]

  1. 1.【はじめに】その書類選考、本当に「人間の能力」を見ていますか?
  2. 2.■ 第1章:なぜ、ES選考は「ザル」になってしまったのか
  3. 3.■ 第2章:脱ES。AI時代に導入すべき「3つの代替フィルター」
    1. 3.1.1. 「適性検査(性格・価値観診断)」のフロント導入
    2. 3.2.2. 「動画面接(自己紹介動画)」の活用
    3. 3.3.3. 「リアルタイム・オンデマンド課題」の実施
  4. 4.■ 第3章:選考フローを「守り」から「攻め」へ変える
    1. 4.1.1. 「リードタイム」の短縮が勝負を決める
    2. 4.2.2. 「フィードバック」で差別化する
  5. 5.■ 第4章:あなたの会社の「選考フロー健全度」診断
    1. 5.1.▼ AI時代における「選考プロセス」自己診断リスト
  6. 6.■ 第5章:改革のステップ。まずは「捨てる」ことから
  7. 7.■ まとめ:選考とは「ジャッジ」ではなく「相互理解」である

【はじめに】その書類選考、本当に「人間の能力」を見ていますか?

「数百枚のエントリーシート(ES)を読み込んだが、どれも金太郎飴のように同じ内容だった」

「書類選考で落とした学生の中に、実は優秀な原石がいたのではないか?」

「面接に進んだ学生が、書類の印象と全く違ってガッカリした」

生成AI(ChatGPT等)が就活の「必須ツール」として定着した今、多くの採用担当者が、従来の選考プロセスに対してこのような「構造的な限界」を感じ始めています。

かつて、ESは学生の「論理的思考力」や「志望度の高さ」、そして「文章構成力」を測るための有効なフィルターでした。しかし、今やAIを使えば、誰でも論理的で、誤字脱字がなく、熱意あふれる美しい日本語の文章を数秒で生成できてしまいます。

これは何を意味するのでしょうか。

それは、「文章の綺麗さ」で足切りを行う従来の選考スタイルが、完全に機能を失ったということです。

AIが書いた「減点のない完璧な書類」を通過させ、自分の頭で一生懸命考えた「少し不器用な書類」を落としてしまう。これこそが、現在の採用現場で起きている最大の「機会損失(ミスマッチ)」です。

今回は、AI時代において形骸化した「ES偏重」の選考プロセスから脱却し、真に自社にマッチする「会うべき人材」と出会うための「選考フロー改革(プロセス・リエンジニアリング)」について、具体的な手法と導入ステップを徹底解説します。


■ 第1章:なぜ、ES選考は「ザル」になってしまったのか

対策を講じる前に、まず「なぜ従来のES選考が通用しないのか」を論理的に理解する必要があります。

それは、ESが評価の軸としてきた能力が、AIの得意分野と完全に重複してしまったからです。

これまでの選考基準と、AI時代の現実を比較してみましょう。

評価項目

従来のES選考の狙い

AI時代の現実(評価不能の理由)

文章力

相手に伝わる構成力があるか

AIがプロ級の構成に修正するため、学生の実力差がつかない

論理性

ロジックに破綻がないか

AIが矛盾点を自動検知・修正するため、全員が満点になる

志望度

企業研究を深く行っているか

AIがHPを要約し、最適な志望動機を生成するため、本気度が見えない

注意深さ

誤字脱字やケアレスミスがないか

高度な校正ツールで撲滅されるため、指標にならない


この表から分かるように、ESだけで学生の能力を測ろうとすることは、AIの性能テストをしているようなものです。

さらに深刻なのは、「AIリテラシーの高い、要領の良い学生(=ES完璧)」と、「真面目で実直だが、AIを使わない学生(=ES拙い)」を比べた時、前者が圧倒的に有利になってしまう点です。

もちろん、ビジネスにおいてAI活用能力は重要です。しかし、私たちが採用したいのは「AIを使えるだけのオペレーター」ではなく、「AIには出せない答えを出せるリーダー」のはずです。

これからの選考設計に必要なのは、評価軸を「AIが介入できない領域」へ大胆にシフトさせることです。


■ 第2章:脱ES。AI時代に導入すべき「3つの代替フィルター」

ESでのスクリーニングが限界を迎えた今、初期選考(母集団形成〜一次選考)で何を導入すべきか。

採用総研では、貴社の課題に合わせて、以下の3つの手法への切り替えを推奨しています。

1. 「適性検査(性格・価値観診断)」のフロント導入

多くの企業が適性検査を「面接の直前」や「最終確認」に使っていますが、これを「説明会などの序盤」に前倒しします。

AIは文章を作れますが、性格診断の結果を完全に偽装することは困難です。多くの適性検査には「ライスケール(虚偽回答の検知機能)」が備わっており、自分を良く見せようと矛盾した回答をするとアラートが出ます。

「文章が上手いかどうか」ではなく、「自社のカルチャーに合う資質(コンピテンシー)を持っているか」を科学的なデータで判断し、マッチ度が高い層を優先的に次のステップへ案内する。これにより、面接官は「性格的に合いそうな学生」との対話に時間を割くことができます。

2. 「動画面接(自己紹介動画)」の活用

ESの代わりに、「30秒で自己PRをしてください」「最近一番悔しかったことを話してください」という動画をスマホで撮影して提出させます。

話す内容(スクリプト)自体はAIで作れます。しかし、以下の要素はAIでは生成できません。

  • 表情の豊かさ、目の輝き

  • 声のトーン、抑揚、話し方の間

  • 醸し出す雰囲気、清潔感

テキスト情報では削ぎ落とされてしまうこれらの「非言語情報」こそが、AI時代における最も信頼できる判断材料になります。「会ってみたら全然違った」という面接の無駄打ちを劇的に減らす効果もあります。

3. 「リアルタイム・オンデマンド課題」の実施

自宅で時間をかけて作るESではなく、説明会直後や選考会場(あるいは監視付きのWebテスト環境)で、制限時間内に課題に取り組ませます。

  • 「今の説明会の内容を踏まえて、当社で挑戦したいことを300字で書いてください(制限時間10分)」

  • 「このトラブル事例に対して、あなたならどう対応するか回答してください(制限時間15分)」

「今、この場で考えてください」という状況を作ることで、AIという補助輪を外した「素の思考力」や「瞬発力」を見極めます。


■ 第3章:選考フローを「守り」から「攻め」へ変える

ここまでは「変な人を入れない」ためのスクリーニングの話でした。

しかし、選考プロセス改革にはもう一つ、非常に重要な視点があります。それは、「優秀な人材を逃さない(アトラクトする)」という視点です。

優秀な学生ほど、選考プロセスを通じて企業を値踏みしています。「ESを書かせるだけの旧態依然とした企業」や「AIで書いたような定型文の返信しか来ない企業」を、彼らは敏感に感じ取り、見限るスピードが早くなっています。

ここで意識すべきキーワードが「CX(Candidate Experience:候補者体験)」です。

1. 「リードタイム」の短縮が勝負を決める

AIを使う学生は、複数の企業に同時にエントリーし、高速で選考を進めます。

「ES提出から結果連絡まで2週間」もかけていては、その間に他社の内定承諾をしてしまいます。

  • 適性検査の結果で即時に合否判定を出す

  • 日程調整ツールと連携し、合格通知と同時に面接予約を完了させる

このように、「鉄は熱いうちに打つ」スピード感のあるフロー設計自体が、「この会社は意思決定が早い」「DXが進んでいる」という魅力付けになります。

2. 「フィードバック」で差別化する

AIによる自動判定が進む中で、学生が最も飢えているのが「人間からのフィードバック」です。

選考の各フェーズで、「あなたのここが良かった」「ここはもっとこうすると良い」というフィードバックを少しでも返すこと。これは手間がかかりますが、AI選考が主流になるこれからの時代において、最強の差別化要因になります。

「自分のことをちゃんと見てくれている」という信頼感は、最終的な内定承諾率に直結します。


■ 第4章:あなたの会社の「選考フロー健全度」診断

御社の現在の選考フローは、AI時代に対応できていますか?

以下のチェックリストで、現状を診断してみてください。

▼ AI時代における「選考プロセス」自己診断リスト

【1】スクリーニングの手法

 [ ] 志望動機の文字数(400字など)や文章の綺麗さだけで合否を判断していない

 [ ] ES提出前に、会社説明動画や適性検査で「自分に合うか」を学生に自己判断させている

 [ ] 面接官個人の感覚だけでなく、客観データ(適性検査等)を評価に組み込んでいる

【2】学生への負担とCX(体験)

 [ ] 一次面接までのリードタイム(期間)を短縮するシステム導入や工夫をしている

 [ ] 学生に「同じ内容」を何度も入力・提出させていない(履歴書とESの重複など)

 [ ] 不採用通知(お祈りメール)がAIのような定型文になっていない

【3】評価軸の転換 

 [ ] 「文章の綺麗さ」よりも「行動の事実(何をやったか)」を重視している

 [ ] オンラインだけでなく、対面やリアルタイムで判断する場を設けている


もしチェックが入らない項目が多い場合、御社の選考フローは「AIを使う学生には突破されやすく、本当に欲しい優秀な学生からは敬遠されやすい」という、最悪の状態になっている恐れがあります。


■ 第5章:改革のステップ。まずは「捨てる」ことから

いきなり全てのフローを変えるのは難しいかもしれません。

まずは、小さな一歩から始めましょう。

STEP 1: 「無意味な記述」を廃止する

「自己PR」「志望動機」などの長文記述をESから削除し、その分を「適性検査」や「履歴書(事実情報)」の確認に充ててください。これだけでも工数は大幅に減ります。

STEP 2: 面接の冒頭5分を変える

面接でESの内容をなぞる確認作業をやめ、「ESに書いていないこと」を聞く質問からスタートしてください。

STEP 3: 「動画面接」を試験導入する

まずは希望者のみ、あるいは特定の職種のみで動画面接を導入し、実際の学生の雰囲気と面接評価の相関を見てみてください。


■ まとめ:選考とは「ジャッジ」ではなく「相互理解」である

AIの登場は、私たちに「選考とは何か」を問い直す良いきっかけを与えてくれました。

これまでは「大量の学生を効率よく捌く(ジャッジする)」ためにESが使われてきました。しかし本来、選考とは企業と学生の「相互理解(マッチング)」の場であるはずです。

AIで作られた美辞麗句の書類を読み込む時間をゼロにし、その分を「学生の素顔を見る時間(動画面接や対話)」や「自社の魅力を伝える時間(フィードバック)」に充てること。

それが、結果としてミスマッチを減らし、早期離職を防ぎ、採用成功への近道となります。

「ESを廃止するのは勇気がいる」

「適性検査をどう活用すればいいか分からない」

「自社に合った選考フローを設計してほしい」

そのようなお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ株式会社採用総研にご相談ください。

貴社のターゲット人材に合わせた、「AI時代に勝てる選考プロセス」をゼロから設計いたします。


【無料相談】今の選考フロー、見直しませんか?

現状の歩留まりや課題をヒアリングし、

「どこで優秀な人材が離脱しているか」「どこに無駄があるか」を分析します。

無駄な工数を減らし、採用精度を高めるために、まずはご相談ください。

【採用総研の採用コンサルティングサービス】


山岡龍市
山岡龍市
2018年入社。 小規模~大規模まで、企業規模を問わず、新卒採用のサポートを実施。 中でも採用が難しいとされる施工管理職としての理系採用でのコンサルティング実績多数。 ターゲティング採用やマッチングイベントなど、企業からのアプローチ型(攻めの)採用に精通し、現在はセクションリーダーとして若手社員教育も手掛ける。 また、内定者/新入社員研修の講師も兼任し、採用後の社員定着まで見据えたトータルの提案が得意。 その他、採用ノウハウセミナーにも多数登壇実績あり。

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